ピコ秒レーザーによる全顔治療「ピコトリプル」
近年、従来のQスイッチレーザー(ナノ秒発振)と比較して非常に短時間で発振されるピコ秒レーザーが登場しました。このレーザーは通常のレーザーのような光熱作用ではなく、光が熱に変わるより遙かに短い時間での照射によって、非熱的に標的を破壊します(光音響効果)。つまり周囲へのダメージを最小限にした治療が可能となったのです。瞬発力が強いため、出力の調整によって従来困難とされた薄いシミや入れ墨治療に有効であるだけではなく、出力を敢えて下げて、様々な形状のビームを用いる事により、最小限のかさぶたで顔の色素全般や肌理、張りなど皮膚の様々なトラブルを解消する照射法も可能となりました。
仕事の関係上かさぶたを作ったりテープを貼る治療は無理だけどシミは取りたい、顔全体にシミがあり、肝斑もあるのでレーザーは怖いというような場合には非常に有効です。もちろん、きちんとシミを取る場合はしっかり高出力でメラニンを破壊する必要がありますが、回数をかけて徐々に薄く、自然に改善していくという面で、フォトフェイシャルの次の世代の治療と言えます。用いる機種は世界最短パルス幅を誇るキャンデラ社のピコウェイです。
当院ではレーザーメーカー本社と協力して開発した3種類のハンドピースを用いて全顔の治療をします。ピコトリプルと称しています。以下にそれぞれの特徴を述べます。
- ポイント用レーザー
- メラニンへの吸収率が中程度とされる波長のビームを用いてスポット状にシミを破壊します。アレキサンドライトという古典的波長と同等のレーザーですが、チタンサファイアという結晶から発振されます。半日ほど赤みが出ますが、その後は僅かな色調変化のみでかさぶたというレベルの変化はありません。1週間ほどでシミが薄くなります。
- トーニング
- メラニンへの吸収率が低い波長(Nd:YAG)を用いて実施する肝斑への治療法として普及しているレーザートーニングの手法を用い、肝斑を含めて顔全体のくすみを除去します。ピコ秒レーザーを用いる事でより肌への負担を軽減します。
- フラクショナルレーザー
- メラニンへの吸収率が高い波長のビームをフラクショナル(無数の点状)ビームとして照射します。Axiconという特殊なレンズ形状を組み込み、フラクショナル特有の強い反応をコントロールした画期的な仕様です。肌の質感改善とくすみ除去に有効です。
他社のピコ秒レーザー治療と異なり、3つの波長を用いる事、出力の調整が自在であること、全顔治療専用に開発されたハンドピースを用いる事が特徴です。
治療後の経過
半日ほど赤みが残る事が多いです。ごくまれに湿疹様の症状が出ることがありますが、数日で改善します。日常生活に制限はなく、紫外線ケアと保湿が重要です。照射直後から肌の張り感が得られ、1週間ほどで色調の改善も得られます。張りはレーザーによるコラーゲン線維の腫脹によりものであり、1ヵ月を過ぎると効果は減っていきますが、回数を重ねるとコラーゲンの再構築が進むこと、またメラニン全体の減少による美白効果などから、その効果が持続するようになってきます。
治療間隔など
基本的には月に1回程度、3回の治療をおこないます。但し回数制限があるものではなく、またフォトフェイシャルのように皮膚を焼きませんので、長期継続によるダメージは殆どありません。多くの方は3〜5回終了後にメンテナンスとして数ヶ月ごとに治療を継続されています。
*肝斑治療専用機ではありません。肝斑は先ずスキンケアに始まり、内服、外用療法が基本となります。
治療費は1回3万円(税別)となります。