形成外科・美容皮膚科って何?・・・・解説
形成外科とは
まず最初に私が研修を行い、専門医(認定医)となっている形成外科についてお話しします。そもそも形成外科はひどい傷跡や先天的な異常(いわゆる唇裂=「みつくち」や耳が変形しているなど)を主とし、またガンで体の一部をごっそり取ったりした場合の修復、皮膚のできものをきれいに取る、顔の骨折修復など、体表面の変形を正常に近づけるのが仕事です。外見の異常で苦しむ患者さんが社会で適応していくためのお手伝いをさせていただくものです。さらにはこれらの技術を用いることで、もともと正常であっても自身が気に入らない部分を治療する、いわゆる美容外科があります。形成外科の医学書においては、主たる診療の一分野に美容外科があると定義づけられています。
以前は手術が主だった治療方法でしたが、近年レーザー機器の発達などによりその手段も多彩になってきました。我々の間では「形成内科」などと称していますが、レーザーによるほくろ取りやあざ取り、ケミカルピーリング、コラーゲン注入、特殊な塗り薬などのメスを使わない分野です。
美容皮膚科とは
一方美容皮膚科は皮膚科医によって始められました。多くの皮膚科の先生方はメスを持たない(もちろん手術をされる皮膚科の先生も大勢いらっしゃいますが。)ので美容外科はしませんが、医学の進歩によりレーザーをはじめとする各種美容的治療に興味が持たれ始めました。皮膚の生理につき十分な知識を持つ皮膚科の先生方はこれを活用して、正常の皮膚をよりきれいにする治療をはじめたのです。
形成外科と美容皮膚科の境界線
もともとコラーゲン注入などのしわ取り、あざやほくろのレーザー治療、ワキガの手術などは形成外科医が得意としてきました。一方スキンケアや塗り薬などは皮膚科医が得意としてきました。しかし、現代医学の発達とともに、それぞれがお互いが得意とする分野に少しずつ入り込んできて、両者の境界がなくなっているのです。
結局、形成外科、皮膚科両者とも、そこに至る過程は別であっても美容医療に関しては同じ道を歩み始めたのです。しかしながら一部の医師はビジネスとして参入し、レーザー治療などを行うようになってきました。レーザーは方法さえ覚えれば治療はできますが、万が一副作用やトラブルが起こった場合には、形成外科や皮膚科の知識がないと対処できません。どんなビジネスでも同じとは思いますが、流行の分野に新規の参入業者は付きものです。
実際の診療内容
実際の美容皮膚科(=形成外科のうち手術をしない治療)の診療内容ですが、基本的には病気でない皮膚の様々なトラブルが対象です。また、ニキビのように皮膚科で診療する病気でも、スキンケアが重要なものは特殊な手段を応用して治療します。具体的にはしみ・しわなどの加齢によるトラブル、むだ毛やわきがなどの悩み、毛穴の広がり・くすみ・肌荒れなどの美肌対策、ほくろ・いぼ・あざの治療というのが代表的なところです。
美容外科って?
さて、美容外科ですが、美容外科の教科書(「美容形成外科学」南江堂出版)によれば「1957年、形成外科の研究会が発足、それとは別にいわゆる美容整形外科が医学常識や倫理を無視してはびこりだした。」とあります。この少し前頃から、皆さんご存じのように、マスコミなどでたびたび問題とされる悪徳美容外科医が社会問題化してきました。これらの救済をも目的として1956年東京大学整形外科内に形成外科診療班が発足(1960年に独立)します。その後形成外科は、1958年研究会が発展して学会が発足、また美容外科の領域にも多くの業績を残すようになってきました。そして、形成外科医を経験する一定の条件を満たした医師のみを正会員とした日本美容外科学会も発足しました。もちろんこれとは別に、良識のある開業医の先生方が美容外科を独自に発展させ、別組織の日本美容外科学会ができています。我が国においてはこの点が問題であり、今後一本化をはじめとする様々な変化が起こることでしょう。このような現状は、やはり患者さんにとってもあまり喜ばしいことではありませんから。
美容外科は現代社会においては、非常に普遍的になりつつあります。かつて日本では美容外科というと敷居が高いような怖い・暗いイメージになりがちでした。しかし、しみ・しわなどに対し、一般の女性が積極的に治療を望みだした時代にとっては、美容皮膚科と融合し、それによって、より積極的な肌のケアという概念で美容外科に行く人も増加しているのです。もちろん二重などの手術も美容外科では重要で、積極的に美しくなろうとする現代女性の要求の高まりがあるために、これらでさえも非常に受け入れ易くなってきました。アメリカではまさにそんな時代になっています。今後ますます美容外科、いえ総合美容医療の需要が増大してくるでしょうから、良質の医療、総合的な治療を受けることのできるクリニックがもっと増えても良いのではないかと思います。私自身、形成外科医としての経験を最大に活用し、レーザーや手術といった一つの方法のみにとらわれることなく美容医療を総合的に実践していきたいと考えています。