フラクショナル炭酸ガスレーザーeCO2(エコツー)
ニキビ跡や傷跡、毛穴のレーザー治療の中では、現在最も強力であり、通常のフラクショナルレーザー(スターラックス1540、フラクセル、アファームなど)の数倍の効果が得られる治療機です。
この治療機器は効果も非常に高い分、仕事などに支障の出るダウンタイムという期間が長い治療です。
従来、ニキビ跡や傷跡には、表面を純粋に削り取り、2週間程度で治る傷を作り、その後数ヶ月から1年にわたる赤みや色素沈着を経て劇的に改善するアブレージョンという方法、もしくはフラクショナルレーザーという皮膚に微小な穴を開けて収縮させる方法(数日間の赤みが生じ6~8回の治療を要する)が用いられてきました。eCO2(エコツー・エコ2)はこの中間に位置する治療となります。
従来のフラクショナルレーザーの進化板、もしくはよりハードな治療法とご理解いただければ結構です。韓国や米国ではフラクショナル炭酸ガスレーザーによる治療がニキビ跡などには主流となりつつあります。それだけ有効な手段なのですが、出力に比例して赤みの期間が長くなりますし、点状出血なども生じます。ハイリスクハイリターンの治療ということです。
この出力を抑え、ダメージを最小限にして、小じわ、張り、つや感の改善を図るエコツーフェイシャルという施術もあります。詳細はこちらへ。
その治療理論ですが、レーザービームが0.12mmという微小サイズに設定されており、これを一瞬で多数照射、皮膚に無数の穴を開けます。右の図のように、ちょうど蜂の巣状に皮膚に穴が開くとお考え下さい。
穴の深さ、つまり出力が強いほど効果も高くなりますが、出血が多くなり、照射の密度が増すほど赤みが長く残ります。この穴が開いた部分周囲は熱が発生し、周囲の皮膚は収縮します。また穴が治癒する際にも皮膚は収縮、コラーゲンが増加していきます。これによって傷をぼかしたり、線状の傷跡の幅を狭めたり、また凹みを縮めていきます。小じわも引き締め効果で改善します。多くの場合、1回でも効果は少し感じますが、照射ムラの補正も兼ねて2ヶ月おきに3回程度の治療が基本となります。この手の機器では、照射出力が弱ければ良い結果を出すことはできません。よく同じような治療をして結果が出なかったという患者様が来院されます。当たり前のことですが、医師が状態をしっかりと観察し、肌が耐えうる最大の出力・設定で医師自身が照射をおこなわないと治療は無意味なものとなります。同じ機器だから同じ結果になるわけではありません。
高出力・高密度でさらに重ね打ちなどをおこなう、またその重ね方、角度、治療時間(2パス目までの所要時間)などによって結果は大きく異なるものです。
照射模式図
右の図は照射した状態を断面で見たものです。一番左が直後の状態です。しっかりと穴が開いています。この深さは最大で2.5ミリにまで達します。一番右のように14日すると皮膚は治癒しています。
治療手技には深く削る、周囲に熱を与える、照射径を変更する、全面で削るなど幾つかのモードがあります。
これらをTotalとして組み合わせる治療が可能で、同日照射の際はポイントで深い部分は強く削り、毛穴などの広範囲に拡がる要素も持つものの治療には周囲に熱を与え、額などや炎症を軽く抑えたい部位には熱発生を抑えるなどオーダーメイドに、症状に応じて治療を可変可能です。pointのみ強く照射すると赤みはまるでニキビのようであり、目立ちません(全体ももちろん赤くはなりますがダウンタイムは短くなります)。
現在登場しているフラクショナル炭酸ガスレーザーの中では、ずば抜けて豊富な組み合わせ治療が可能な機種となっています。白人とは肌のタイプの異なる日本人の肌ではこのようなデリケートな使い分けが必要となります。
いかに安全に、それでいて強く照射するかがこの機械のポイントと思われます。
今までのニキビ跡治療では得られなかった改善の手応えを感じており、他のフラクショナル炭酸ガスレーザーや通常のフラクショナルレーザーでは満足されなかった人、少ない回数で大きな変化を得たい人にはお勧めできる治療法です。
しかし、もちろん治療後の赤みや出血などのダウンタイム期間は1~2週間、ハードに削ればさらにそれ以上、覚悟をしていただく必要があります。
eCO2の治療手順
実際の治療手順ですが、前処置として、まず麻酔のクリームを30~60分塗布、その後治療となります。麻酔しても痛みはあります(小範囲の傷跡などの場合は麻酔無しで実施します)。治療時間は両頬で10分弱、その後30分程度冷却をしてお帰り頂きます。
最も気になるのが治療後の経過だと思います。下の写真(メーカー提供)のように翌日はかなり赤みが強く、照射出力によっては点状の出血があちこちに生じます。この写真の出力はさほど強くないので、1週間程度で正常に近くなっていますが、出力や肌質によっては回復に2~4週間程度かかることもあります。出力を上げるほど効果も大きくなりますが、リスクも高くなるので、適切な設定が重要です。無理してリスクを冒すのではなく、最適でかつ最大限の出力設定で実施をします。
この治療はかなり大きな変化をもたらすことができますが、治療後のケアも重要です。治療後24時間は治療部を濡らしたり、石けんをつけたりはできません。皮膚に穴が開いているので、その点は十分に理解していただく必要があります。それ以降は擦らないように洗顔などは可能となります。またメイクも軽くなら可能になります。24時間は肌を触らないよう保護剤を貼付します。そして、強い赤みが引くまでの数日間は炎症を抑えるクリームを使用いただきます。その後は必要・ご希望に応じ保湿と創傷治癒効果のあるクリーム・ローションを1ヶ月程度使用します(このクリーム・ローションは1万ほどの実費がかかります)。治りが悪いと、色素沈着や痕が残るなどのリスクがありますので注意が必要です。
出血点が生じると、5日程度は残ります。いわゆるダウンタイムというものが大きくは4~5日、メークで隠せる程度の軽いものは1~2週間とお考え下さい。
そして、ダウンタイム、つまり赤みやかさぶたの期間が長くなるのを構わずに、強く照射してほしいという希望が最近急増していますが、重要なことはダウンタイムが長いということはハイリスクということです。赤みは長く続いても結果が良ければ良いという考えは間違いで、赤みが長引くほどトラブルを起こす可能性も高くなります。当院では相当強く照射はおこなっておりますが、「最適」な設定を目指してます。また患者側からも、リスクを十分に承知した上で、より強い治療をお受けになる事が基本です。
以上、新しい治療としてのフラクショナル炭酸ガスレーザーeCO2の概略を紹介しました。この機器はブリッジセラピーアンコアと並んで、現在最も強いフラクショナルレーザーの一つです。ブリッジセラピーと比較しての最大のメリットは、同じアジア人である韓国人の皮膚を基礎研究して開発されているために、米国で開発されたものと比較して日本人向けの設定が多数用意されていること、アジア人の臨床データが豊富なことです(もちろん米国でも認可・導入されています)。さらに豊富な出力設定と、かなりの高出力を安全に照射可能なことが挙げられますが、逆に難しいのが、医師の技術により効果が大きく異なってしまうことでしょう。
そして現在、当院ではより新しいフラクショナル炭酸ガスレーザーCO2RE治療もおこなっています。eCO2とブリッジセラピーの両者の機能、そして通常のアブレージョン(削り取り)機能までも有する万能型・デジタル制御のレーザーで、非常に幅広いことができる優れた機器です。eCO2と同日に併用するなど、当院独自の更なる治療法も行っており、良好な結果が得られています。
さて、治療費ですが、両頬で60,000円(税込66,000円)、鼻頬で80,000円(税込88,000円)、小範囲の傷跡で15,000円〜(税込16,500円〜)となります。他院の同様の治療よりはかなり安価に設定しているつもりです。また、ご希望の範囲によって費用は異なります。
eCO2の症例写真
海外での症例
治療によって大きな変化が得られています。
当院での症例
患者様の許可を頂いて掲載しております。
4回施術後の写真。かなりハードなモードでの治療です。